Bighorn 100(開催日:2019年6月14〜15日)
レース前週〜レース週
優先度Bのレースだが、優先度Aのレース同様におおよそ二週間前くらいからテーパリングを開始。ところがレース週に入っても若干太ももに疲労が残る感じ。年齢のせいかどうかはわからないが、すこし疲労の抜けが懸念される。正直、調子がどうなの?ただ、RPEに対するスピードはそれほど悪くはない。
レース前日
レース前日に現地入り。5キロほど軽く走る。ペースはそこまで悪くないが、足が重い。疲労のせいかと思ったが、翌日、レースが始まってしばらくしてから、単に標高のせい(スタート地点で約1300メートル)だと気づく。
折返しとなる山頂に残る雪の影響などで、制限時間が一時間延長、スタート時間が一時間繰り上げの午前9時に変更。またFootbridge(48キロ地点)からは夜の冷え込みに備えてジャケットとロングショーツ、頭にかぶるものとグローブが必携との通達。
天気予報ではスタート後、昼までは晴天、昼過ぎから夜まで雷雨、その後やや回復の予報。(なお、結局レース中の天気はほぼ予報どおり。)レース前の数日は降水がそれほどなかったことと、当日も降水確率50%くらいなのでそれほど大変な状況にはならないだろうと予想しながらも、一応悪くなっても良いだけの準備として、ドロップバックにインナーを入れたり、途中3箇所でサポートしてくれる妻にいろいろ持っておいてもらう。
レース当日
コースはざっくりいうと一つ山を超えて、2つ目の山の頂が折り返し。来た道をもどって最後に5マイルフラットの道を余分に走る感じ。帰りのFootbridgeからBear Campまでの上り(106〜112.6キロ地点)を除いて、私が走れないほどの急勾配はそれほどない。
今年HURT 100で優勝したNate Jaquaなど何人か速いランナーがいるのかはわかっているものの、エントリーリストか公開されていないため他に誰か速いランナーが走るか分からない。対策の立てようもないし、出たとこ勝負。作戦もなし。とりあえず自分のペースで走るのみ。
スタート:金曜9:00AM
スタート時点では晴れて日差しが強い。バスでスタート地点まで連れて行かれた後、しばらく待たされる。4年前は11時スタートで非常に暑かった経験から、妻が日よけの傘をもって来てくれていたため、直射日光を避けることが出来た。
スタート時のシューズは2019年モデルのSalomon Ultra Pro。ポカリスエット500ミリリットル、水500ミリリットル、ジェル6個をサロモンの5リットルパックに持ってスタート。Salomon Ultra Proにしたのは、途中雨の予報があるとはいえ、ある程度は走れる状況だろうという判断から。(結局、レース途中までは走れる状況、レース終盤はドロドロだったもののどのシューズでも対応できる状況ではなく、結果的には間違ってはいなかった。)
レース開始後は、ゆっくりとしたペースで。古いSuuntoで光学式の心拍計がなく、また胸バンドが嫌いなので装着していないので心拍はわからないが、普通に話せるくらいのスピード。100マイルは、レースの半分以上は気持ち良く楽しめるくらいのペースで走るのが良い。(後半は辛くなるのだが、それはしょうがない。)
一人、スタートからかなり速いペースで飛ばすランナー。よっぽどのランナーでなければ確実に途中からペースダウンだろうと思っていたが、結局彼がダントツで優勝。ゴール後に彼がSeth Swanson(UTMB4位など)と判明。どうりで速いわけだ。
スタート後は3番手くらい。その後、最初の大きなエイドステーションとなるDry Fork Ridge(21.5キロ地点)までは登り基調。自分のペースを崩さずに走る。その間、3人に抜かれるが、彼らはスタート後しばらくして先頭が気になってか途中からペースを少し上げた印象。彼らが自分より実力が上ならそれまで、そうでなければ後でそのうち自ずとペースが落ちて追いつくだろうと思って自分のペースを守る。
筋肉の疲れは感じないが、地面へのインパクトのせいで足裏が痛い。そのうち解消することを望みながら走っていたら、30キロを過ぎあたりから気にならなくなった。
金曜11:32AM
クルーアクセス可能なDry Fork Ridgeで妻から水とジェルを受け取って、すぐに出発。エイド滞在時間1分。
そこからBear Camp(42.6キロ地点)まではローリング・ヒル。このあたりから私を抜いていったランナーを少しずつ抜き始める。自分のペースは変えていないので、勝手に落ちてきた感じ。
すこし天気が下り坂。雷音が聞こえるが、遠いので怖くはない。
Bear CampからFootbridge(48キロ地点)までの下りは、例年だと底なし沼のように膝まで沈み、シューズがもってかれて脱げるほどのぬかるみで全く走れないのだが、今年はそこまでぬかるんでいない。ただし、ちょっとした小川を超えたりしているので足は濡れている。
Footbridgeでは4年前のレースの反省から、しっかりソックスとシューズを変える。シューズは2018年モデルのSalomon Ultra Pro。バッグもあらかじめ必携品を入れておいたSalomonに交換。あと、想定どおりのタイムで走れば全く不要だが念の為に小さなヘッドランプも持つ。雨が強くなりそうなのでMontbellのレインジャケットは着用してエイドを出る。エイドの直後で一人抜いて、3番手に。
Footbridgeからの上り。雨脚が弱まり、熱がこもって暑く、レインジャケットを脱ぐ。
その後はしばらく単独走。前のランナーも見えないなか淡々と走る。
ジェルは30分に一個程度。また、走っている最中にいつ摂ったのか分からなくなったら、とりあえずジェルを摂取。摂らないくらいなら摂ったほうがまし。エイドではコーラやチキンスープ、ナッツ類、バナナやビスケットなどを主に摂る。
水分はエイドごとに500ミリリットルのフラスク2つに補給して走る。小便をするときは色を確認。しっかり水分を補給していることと、雨もあってか、薄い黄色で脱水の兆候がないまま終始レースを進められた。
ジェルを摂るタイミングかどうかの用途以外にはほとんど時計は見ず、感覚にたよってペース配分。
Elk Camp(70キロ地点)の数キロ手前で、逆行してくる2位のランナー。コース・ロストした模様で若干頭に血が上っているが当たる場所もない感じ。私の後ろについて正しい方向へと走り出す。この時点で2位。自分のペースは変わっていないが、まもなく、じわじわと彼との差が付き始める。
Elk Campを出て少しして、折り返してきた一位のランナー(Seth Swanson)とすれ違う。足色は良さそう。そこからJawsまでの時間を測ったら40分ほど。ということは一時間以上先頭と差がある計算。こりゃ追いつかないかな。
折返しとなるJaws(77キロ地点)の手前は残雪。今年はアメリカはどこも雪が残っていて、ここも例外ではない。雪の奥は溶けていて、踏むとそのまま踏み抜いて冷たい水で足がびしょびしょ。バランスを崩して顔から雪面に突っ込むことも。流石に走れない。
金曜18:41PM
Jaws。日没は9時頃なのでまだまだ明るい。ここで妻と二度目の遭遇。どうせ折り返し直後にまた雪を超えて足がぬれるのでシューズは交換しなかったものの、ソックスは交換。また、予備のヘッドランプに変えて、しっかりとしたヘッドランプ(Black diamond Icon)とウェストランプ(Ultraspire Lumen 600)を持つ。最近は老眼もあってランプは2つ持ち。まだ明るいのでヘッドランプはバッグに入れて出発。ポテトスープとそうめんでしっかりと補給。エイド滞在時間9分。
いつもの100マイルよりも足の疲労は感じていない。ここまでのところペースとしては間違ってなさそう。
来た道を戻る。4年前に下りで気持ちよく飛ばしすぎたことの反省から、それほど飛ばさずに下る。後続のランナーとすれ違う。「Good Job!」「後ろに虹が出てるよ!」など、ちょっとした言葉を交わしながら下る。シアトルから来ているランナーや、日本人の方々も元気そう。途中でクリッシーがペーサーをやっていてちょっとしたサプライズ。
Footbridge(106キロ地点)の手前からまた雨脚が強くなってきて、ジャケットを着る。遠くに雷光。
Footbridgeのエイドでシューズとソックスを交換している間に、3位のランナーがエイドに入ってきた。私に気づかずにサポートクルーと「2位を追いかけるから早く出るよ」と話しているので、「2位はここにいるよ」と教えてあげた。結局、彼が先に出て、ここで私は3番手。ここからゴールまで順位の変動なし。
FootbridgeからBear Camp(112.6キロ地点)は急な上り。再び雨脚が弱まる。しばらくは木々の中で熱がこもるのでジャケットを脱いだが、途中の尾根は風が抜けて寒く、またすぐ着る羽目に。
Bear Campからは、先程抜かれた2位のランナーのヘッドランプをうっすら見ながら走る。離れずともなかなか近づかない感じ。
Cow Camp(123キロ地点)からDry Fork Ridge(132キロ)までは雨の影響でひどいぬかるみ。昼とは全く異なる様相。上りでは踏み出すとズルズルと滑る感じ。バランスを取るのに一苦労し何度も尻もち。走れるところを探しながら進む。足はまだ残っているものの、多少キツくなってきた。気合を入れる感じで強く息をしながら進む。
土曜3:41AM
Dry Fork Ridgeで再度、妻のサポート。後続とは少なくとも40分は離れているとのこと。あまり時間をかけないよう、ソックス交換&シューズをSalomon Speedcrossに交換し、必要な補給をしてすぐ出発。ほぼ雨は上がっている。エイド滞在時間6分。
ハッハッ、と音に出るような息遣いで走る。このまま3位で終えたいという気持ちから、勝手にちょっと焦りだし、後続が気になって時折後ろを振り向いてしまう。前だけ見ようと思っても、どうしても時々振り返ってしまう。
悪路で強いはずのSpeedcrossでも泥が靴にへばりついて重い。これじゃあどんな靴でもあまり変わらないなという感じ。時々、石でこびりついた泥を削ぎながら進む。
明るくなり始めたLower Sheep Creek(149キロ地点)手前、オフトレイルからジープロードに入る箇所でコースマーキングを見失い、辺りをさまよう。オフ・トレイルをまっすぐ進むのかと思ってルートを探していたが、結局ジープロードに折れるのが正解。10分弱はさまよったか。焦ったが、後続は見えてこない。
150キロ地点からのダダ下りが長く感じる。今から振り返るとまだ足は動いていたように思えるが、走っているときは不安で時々後ろを振り返ってしまう。
日が出て、雨も上がり、暖かくなりはじめた。ジャケットを脱いで残り10キロ。次第に腰が痛くなってきた。ぬかるみでバランスを取り続けていたことが原因か。腰を伸ばすと痛くて、前かがみになってしまう。
最後の数キロはフラットな未舗装路。日差しが暑い。腰の痛みが耐えられないレベルになってきて、立ち止まってはまた走り始める、を繰り返す。
土曜7:38AM
町へと入り、ゴール地点の公園へ。ゴールラインまで数百メートルだが、腰の痛みで何度もスローダウンしながら進む。3位を守って安堵のゴール。結局、後続とは1時間以上の差があった。
考察
景色も雰囲気も良いレース。エイドのアクセスも良いらしく、妻にも好評で、もっと日本から来ればいいのにと言っている。
完走率が53%くらい。山頂の雪で低体温になる人や、日中の暑さで熱中症になる人がいたり。また雪やぬかるみでタイムも普段より1時間は余分にかかるコンディション。今年は対応が難しいタフなレースだったというのが、だいたい一致する見方か。
そんな中、終始自分のペースでレースをし、天候の変化に対しても適切に対応し、レース後も体重が減らないほど補給をし、小便の色も脱水のサインもなし。レース・マネジメント的には概ね適切にできたと思う。順位的にも満足。前太ももの筋肉痛も最小限で、これまでの100マイルでも一番足を残せたレースの一つだと思う。
とにかく最後は腰が痛かった。腰の痛みはHURT 100でも出た症状。対策があるか探る必要がある。
また、終盤に後続を気にしてしまったのは直したいところ。常に前を向いて走りたい。
ゴール設定が正しかったのかはよくわからない。年初の目標設定は、今年3本走る100マイルレースの少なくとも一つで3位以内。実際には2本走っていずれも3位。達成可能だが容易ではないゴールを設定したいところだが、もう少しハードルを上げても良かったのか、どうなのか。